TOPICSINTERVIEW

あなたには“異性”に言えない性の悩みがある?男女の友人同士でする「セックスの話」。

ガールズトークでセックスの悩みを語り合う、そんなシーンは現実でも物語の中でもよく見かけるもの。でも、“男女”の友人同士がセックスや性の悩みについて語り合うのはどう?実はよく分からないお互いの身体のことだからこそ、“男女”で話す時間も大事なのかも。普段からそれぞれ性に関する情報発信をおこなっている、友人同士の工藤まおり、入澤諒が「“男女”で語る性の話」をテーマに対談。(※今回はシスジェンダー(*1)の男女の話にフォーカスしています)

工藤まおり(写真右)

津田塾大学数学科卒。 新卒でリクルートスタッフィングに入社。 人材派遣営業に携わったのちに、1年で退職しTENGAに転職。 TENGAと、女性向けセルフプレジャー・アイテムブランドirohaのPRに4年携わったのちにフリーランスとして独立。 複数社のPR業務と恋愛・性・キャリアに関するコラムを執筆。

 

入澤諒(写真左)

新卒入社した会社で女性の健康情報サービスの企画やマーケティングを担当。転職後、妊活のジェンダーギャップ解消のため、スマホで精子のセルフチェックができるサービスを立ち上げ、プロデューサーを務める。その後スタートアップ企業に参画し、現在はD&I関連の事業開発を手掛けている。趣味はカヤック。

性の話をする時には「前置き」を

ーそもそも二人は“男女”の友人間でセックスや性に関する話をすることはありますか。

 

入澤:工藤さんはめっちゃしてるよね。

 

工藤:そうだね。前から割と性に関する話題には関心があったし、周りの男性と話したり、相談されたりすることも多かったかも。会社員時代も、同僚や上司と話すことがあったかな。

 

入澤:会社で上司にそういう話をしているのはすごいよね。

 

工藤:実は、学生時代にアルバイトで一緒に働いていた女性の先輩が、さらりと「私は1人でしてるよ」って言ってたの。その話を聞いたときに、女性もマスターベーションの話をしてもいいんだって思えたのがきっかけで、今みたいな発信もするようになったんだよね。それまでずっと、女性である自分がマスターベーションをするのは罪悪感があったんだけど、その人の話を聞いて、1人ですることは悪いことではないと思えて。でも、入澤さんも、すごくカジュアルに女性と性の話できるよね。

入澤:私は新卒で入った会社が生理に関するサービスを扱っていたから、自然と慣れたかな。当時、私はその部署初めての男性社員で、周りはみんな女性だったんだけど、みんな自分の生理はどうのこうのと話しているから、気にならなくなったかな。もちろん最初は恥ずかしさもあったよ。男兄弟だから、家族には、女性は母しかいなくて、家でナプキンすら見たことなかったし、身近なものとして認識したことなかったな。

 

ー人よりも性の話をする機会が多い二人かと思いますが、人と性の話をするときに気をつけていることはありますか。

 

入澤:あまり相手の好みを聞いたり、自分の好みや体験を話し過ぎたりしないようにすることかな。一般的な話や、知識はいいだろうけど、個人的な話はいやらしくなりやすい気がするな。

 

工藤:私もセクハラにならないように気をつけてる。例えば、前置きとして「嫌だったら言ってね」とか「こういう話、大丈夫?」と確認してから話すようにするとか工夫してる。

相手の身体のことが分からないままAVをお手本にしてしまう

ー周りからよく聞く、“異性”に言えない性の悩みがあれば教えてください。

 

工藤:セックスレスの話が一番多いかも。セックスしたくないとか、逆に誘っても断られるとか。

 

入澤:私は職業柄、妊活とか不妊治療系の相談をもらうことが多いかな。セックスの話とか、関連して夫婦間のコミュニケーションの話とかも。でも、相談してくるのは女性の方が多いかも。パートナー(男性)のことを相談したいので、男性に聞きたいけれど、気軽に聞ける人がいないから私のところに相談に来る、みたいな感じかな。男性は下ネタみたいな性の話はするけれど、悩みや弱みはあまり共有しないのかも。

工藤:エロとか下ネタ、猥談として話せるけれど、真剣な話としてできる男性は確かにあまり多くないかもしれないね。妊活にしても、女性の方が危機感があったりするのかな。

 

入澤:生理もないし子宮もないから、私自身も生殖に関しては自分ごと化しにくいなと感じるときがある。冗談っぽくしゃべってしまうのも、深刻さがないからだと思う。

生理がきて、お腹が痛くなって血が出て、子どもができる可能性がある立場からしたら、性の話ってシリアスだよね。男性も睾丸が痛くなる時期がある、とかあったらもっと実感できる気もするけれど。

 

工藤:確かに。多くの女性はセックスしたらその都度、「妊娠したらどうしよう」って少なからず不安になると思う。

 

入澤:そう考えると、セックスはそんなに気楽にできることじゃないし、性の話も軽々しくふざけてするものではないなと思うな。そんな身体の違いが根本的な違いになってしまっているのかも。

ー二人自身が性について学んだり、多くの人から悩みを聞いたりしていくなかで、セックスや性についての誤解のエピソードはありますか。

 

工藤:やっぱり少し前までは、女性はマスターベーションしないとか、性欲がないと本当に思っている男性は身の回りに割といたかな。そんな声を耳にする度に違うよって伝えたりしていたんだけど。あと、AVの影響なのか、女性はみんな「中でイクものだと思っている人も多かったかも。

 

入澤:そもそも、イカなくてもいいって女性も多いんだよね?それも知らない男性が多い気がするな。

 

工藤:そうそう。無理に頑張って痛くされるよりも、裸で抱き合うだけでいいって人も多いと思う。逆に男性から相談されるときも、射精までできないからセックスにハードルを感じているケースがあるんだけど、必ずしも挿入まで求めてないんだよね。「セックス=射精まで」という固定観念が強すぎて、コミュニケーションが上手くいかないパターンはよくあるかも。

 

入澤:AVに関する話だと、「中出し」のコンテンツで、よく溜めて濃い精液を出すことによって相手の女性が妊娠するみたいなストーリーがあるんだよね。でも、本当は精子って毎日つくられるから1日、2日に1回出した方が元気な精子が作られやすくなる。妊活をしている人たちでも、性の知識源がアダルトコンテンツしかないから、そういった間違った情報を信じて、精子を溜めたりしちゃうってことはよくあって。そういう意味でも、AVを元にした誤解はよくあるなと思うな。

 

工藤:最近はYouTubeとかでも「こういうテクがいい」とかって紹介しているのもあるけど、ああいうのも危ないよね。AVもYouTubeも正しい知識とは限らないっていう認識が広まってほしいな。

 

入澤:セックスってフィードバックの機会がないじゃない。誰かに見てもらうことなんてそうそうないし、カップルはカップルだからこそお互いを気遣って正直に言えなかったり。間違った知識を頼りにしたまま、問題が解決しない状態の人も多そう。だからこそ、友達や専門家への相談が大事だよね。

専門家に聞く時間・友達に聞く時間

ーセックスや性に関する相談相手として、友達や知人と専門家の使い分けはどのようにしますか。

 

工藤:友達は、あくまで傾聴してもらうためにお願いするのが良さそう。専門家ではないのに「こうした方がいい」ってアドバイスをする人はちょっと怖い。

 

入澤:確かに。「私はこうだったよ」って話は、結局その人のケースでしかないから、みんなにそれが当てはまるわけじゃないよね。

 

工藤:そうなんだよね。私もセックスレスで悩んでいたときに、「そんな男別れちゃいなよ」って友達に言われて嫌だったな。セックスレスにも理由や対処方法があるだろうに、よく知らないのにいろいろ言われるのもなって。「あなたのときどうだった?」と情報交換するなら友達でもいいのかも知れないけど。医療機関や専門家には具体的な事例は教えてもらえないだろうし。やっぱり、何か問題を解決したいときは専門家に聞く方が安心かな。とは言いつつ、専門機関に行くのはハードル高いな…。

 

入澤:工藤さんはなかなか病院とか行かないと言ってたよね(笑)。私は早く解決したいと思って専門機関にすぐ行くんだけど、工藤さんはなんで行かないの?

 

工藤:入澤さんと逆で、知っている人に自分の私生活を話すのはあまり抵抗がないけれど、よく知らない人に自分の悩みを聞いてもらうのが苦手だからかな。そういう意味では、もちろん専門機関に行って早く対処することは重要だけど、友達に聞いてもらう時間も大事だなと思う。

ー男女で性やセックスに関してオープンに話すことのメリットを教えてください。

 

工藤:女性からすると、やっぱり男性の身体のことは分からないことが多いから、それを知るためにもいい機会だと思うな。入澤さんのところにも女性が相談に来るように、身体が違うことによってどうしても考え方が違ったりする場合もあると思うから、新しい視点で考えるためにも大事。

 

入澤:自分の中の偏見が減って、考え方が広がるよね。AVしか見ていなかったら、疑いようもなくその中の女性像を信じてしまうけれど、オープンに話すことによって、例えば女性のなかにもいろんな女性がいるんだってことが分かる。男性、女性だけじゃなくてもっと幅広いパターンの人がいるってことに気づけると思う。それに、性のことをもっとオープンに話せれば楽になる人はたくさんいると思うな。市場規模を見ても、みんな興味がある話題のはずなのに、あまり話されていない。同じ悩みを持っている人と共有できたりしたら、もっと生きやすくなりそう。

※ *1シスジェンダーとはシスジェンダーとは性自認(自分の性をどのように認識するか)と生まれ持った性別が一致している人のこと

Text/Natsu Shirotori

 

Photo/Elena Iwata

 

Edit/Noemi Minami(NEUT)

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