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どんな性共育コンテンツを実現する?それぞれが磨き込んだ視点とアイデアとは。性共育ワークショップ DAY4レポート

性共育プロジェクトについて

「#しかたなくない」プロジェクトが2022年5月よりスタートした、「この国の性教育が後回しになっているのは #しかたなくない」にフォーカスした実装活動。
教師によるマニュアル的な「教育」ではなく、大人も子供も垣根なく、本当に知りたい事への理解を日常的に深めていく「共育」。それこそが性分野における水準を高めるキーになるのではないか。そんな仮説を実証するべく「性共育」を模索し、形にすることで社会のアップデートを目指す。
これまでの性的マイノリティや障がいがある方の多様な性を軽視した「マジョリティのためだけの性教育」ではなく多様な視点をもったプロジェクトにすべく、1月にプロジェクトオリエンテーションを実施。その参加者の中から有志で、性的マイノリティの当事者、障がい福祉施設の方、現役の学生、産婦人科医、性教育講師、企業の方など、さまざまな視点と専門性のある方々をメンバーに迎え、活動中。

「この国の性教育が後回しになっているのは #しかたなくない」にフォーカスした実装活動『性共育プロジェクト』が始動しました。本プロジェクトでは年齢も活動領域も異なる約20名の有志が集まり、性教育を共に育みながらSOCIAL INNOVATION WEEK 2022での「性共育」コンテンツ発表をゴールに、互いの視点・見解を高め合っていきます。
2022年5月に初日を迎え、4回にわたるワークショップの最終日を8月に迎えた本プロジェクト。今回は「性共育のコンテンツの実現」をテーマに行われた5つのチームによる性共育アイデア発表会の一部をお届けします。

168個のアイデアと9時間以上のワークショップの先に生まれたアイデアたち

今まで「性教育の可能性を探る」「性教育のコンテンツを探る」「性教育のコンテンツを定める」をテーマに、日本の性教育の課題や解決の糸口について「学校」「家庭」「地域」「職場」「オンライン」のグループで議論を重ねてきました。先生や講師による一方的な「教育」ではなく、大人も子供も垣根なく本当に知りたいことを知ることが、日本の性分野における水準を高める鍵になるのではないか。そんな仮説を実証するべく模索した「性共育」のアイデアが、ついに発表の時を迎えました。

1現目:学校班 中高生の疑問と悩みに寄り添う副教材「アフター保健体育」

実際にヒアリングしてみて、自分と同じ意見もあれば、今までは知らなかった意見への理解を深めてきた学校班。ワークショップの序盤から、正しい性の情報をインプットすることと性についての話しにくさを課題とし、「なんとなく話しづらい」という感覚が相手への理解や共感の弊害になっていると感じてきました。すべてのワークショップを終えた今、話せる場づくりを行うことで、辛さが軽くなる人がいるのではないかと感じています。

【概要】
性教育の副読本と、オンライン上で専門家に性の悩みを相談できる「オンライン相談室」を組み合わせ、生徒が授業内外で感じる悩みや疑問を、生徒に寄り添いながら解決していくサービス。

【質疑応答】
・副読本はオンラインで見れますか?
-> オンラインで見れるようにしたい。今は1人1人がタブレットを持つ学校も増えている。タブレットで副読本を見れるようにすることで、授業などへの導入ハードルも下げられるのではないか。

・副読本に載せる内容の基準を設けることが難しそうだが、どのように設定していくのがいいと思いますか?
-> 生徒が持つ疑問・悩みなので、できるだけ彼らの声を拾うことを大切にしたい。「いらない」と声を切り捨てると、教科書と一緒になってしまうと思う。

2現目:家庭班 たまに変わる我が家「HEN-YA」

旧来の価値観やジェンダー観を元に設計されている家。実は、DAY3の全体多数決では家の新しい使い方を提案するアイデアに多くの票が入っていた家庭班。しかし、彼らは家の構造を刷新することで、固定化した価値観やそれを元に語られる性のあり方を問い直すアイデアに、より大きな可能性を感じています。

【概要】
旧来のジェンダー規範や価値観で設計されている「家」の課題を解決すべく、家族の価値観やライフステージの変化とともに変わる家。

【質疑応答】
・家の構造が家庭内でのそれぞれの役割を固定化しているという視点に、どのように気づいたのですか?
-> 最初にグループ内で課題感を出し合いながら、それぞれのストーリーを共有した。「実際に実家でこんなことがあった」という話や、「友達からこんなことを聞いた」という話までいろんな人の視点を出し合った。

・家の構造が変わっても、家族がより過ごしやすくなるとは限らない。家族ごとのプライベートな事情まで踏み込まないと変えられないこともある中で、HEN-YAはどういった切り口で期待できるのでしょうか。
-> ものや環境を変えるだけでは変わらないこともある。家族の皆さんとなぜ変えたいのか、何を変える必要があるのかということを一緒に話していきたい。

3現目:地域班 本を入り口に人や情報との繋がりを作る移動式図書館「LIFE RALLY」

性教育が必要な人に届かないという課題を、性教育に関心がない層にも負担なく情報を届けるという切り口でアイデアをまとめた地域班。実際に東京以外の場所から集まったメンバーが多く、現場の課題感や実際の動きと先行事例のリサーチを合わせてアイデアを詰めていきました。参加者からは、学生などコミュニティが限られる子供のうちから正しい情報に触れられたり、困った時に誰かに頼れる場を持ったりすることの大切さを感じたという声も出ていました。

【概要】
性教育の情報への接点が少ない地方で、「本」を入り口に人や情報との繋がりを作る移動式図書館。

【質疑応答】
・本の感想を共有できる仕組みがあると良さそうですね。
-> 私たちも同じアイデアを考えている。キャラバンカーの前に椅子を置き、いつもは話せないことや性について話し合えたり、詳しい人に相談に乗ってもらえるような環境を作りたい。

・実際に性教育の取り組みが進んでいる地域などはありますか?
-> 行政として取り組んでいるのは秋田県・富山県。すべての中学校に産婦人科医の先生が出入りして授業をすることで、中絶率が下がったというデータもある。市・町単位でも積極的に取り組んでいる場所もあり、そのようなところが増えればと思う。

・最初にこのグループで集まった時、地域ならではの課題感としてどのようなものがあったのですか?
-> 地域だと情報を届けにくいという課題がある。地域によっては図書館さえなかったり、集まる場所がなかったりと、情報を届ける場所自体が少ない。加えて、若い人たちは本自体へのハードルが高い人もいる。お店・学祭・道の駅など、ふとした所に移動式図書館があると、本や性の情報にアクセスする可能性は無限に広がる。情報へのアクセスの機会は、地域ならではの必要なことなのではないかと話していた。

4現目:職場班 職場をホンネで話せる場にする「SNACK HONNE」

職場でのストレス改善を、組織の構造から解決するアイデアを提案した職場班。「言っても変わらない」、「制度ってそんな簡単に取り入れてくれるものなのかな」と諦めの気持ちを持ってしまうのも、制度を決める意思決定者の背景が全く見えないことが理由だと考えたのが今回のアイデアの背景です。様々な役割の人が集う職場という場所だからこそ対話を行うことを大切にしていました。参加した学生からは、一人の力で職場環境を変えることは難しいかもしれないが、今回の発表のような場や仕組みがあると学生の自分も社会人になるのが楽しみだという声もありました。

【概要】
職場をホンネで話せる場にするために、これまで共有されづらかった意思決定者たちのホンネに耳を傾けるスナック。1日限定で開催し、ドキュメンタリーにすることで、意思決定者たちのホンネを社会に伝えていく。

【質疑応答】
・スナックでは、実際にどのような会話が繰り広げられそうですか?
-> メンバーの中に、メインターゲットとしている50代男性の意思決定者はいない。ゆえに、あえて具体的な会話のイメージは設定していない。メインターゲットの方にヒアリングすることを大切にし、そこからどのような話をするのか一緒に作り上げていきたい。

・どのように性教育という話題につながる話をリードしていけるでしょうか?
-> 「ママ」として一人に立っていただき、その人に話を回していただくイメージ。個人的に「こんなこと言ったらセクハラだよね」という発言をよく聞くが、50代男性は「わからない」と言うことが難しいのではないかと思う。私たちの「皆さんの状況を教えてください」と状況を聞きにいく姿勢や言葉が、彼らの直面する壁や困り事を開示する環境づくりとして大切なのではないかと思う。

・実際に職場の人をここに連れていくいいアイデアはありますか?
-> 職場の一社員だけでなく、いろんな人が集まるイメージを持っている。感じている課題は、提案の始まりに意思決定者の人たちの価値観や感覚が共有されないこと。だから彼らの感覚や状況を社会に投げることで、これらを前提にいろんな提案やコンテンツが生まれる状況を作りたい。

5現目:オンライン班 おじさんが知っておきたいビジネスマナーとしての性教育「令和のビジネスマナーブック」

おじさんを対象に性教育の機会を広げることを提案したオンライン班。おじさんはおじさんの話しか聞かないということを課題に、「マナーブック」という切り口で性教育コンテンツのインプットを提案します。相手を傷つけず、自分も傷つかない方法としてのマナーと、会社やビジネスの中で成功する手段としてのマナーという双方から、性教育コンテンツにアクセスする切り口を設定していきます。

【概要】
おじさんがZ世代とのコミュニケーションで学んだ性に関する気づきをTwitterで発信し、その内容をビジネス書コーナーに置かれる性教育本「令和のビジネスマナーブック」に。
試運転中のアカウント→https://twitter.com/apudesuruojisan

【質疑応答】
・ルールブックではなく、マナーブックというところにこだわったポイントは何ですか?
-> 人とのコミュニケーションのなかで相手を傷つけたり、自分が嫌な思いをしたりしてほしくない。そういう気持ちを込めて、「マナー」という提案をしている。

・Twitterだけでなく、企業コラボのアイデアもお持ちでしょうか?
-> 企業コラボまで議論が達しなかったのが正直なところ。「性教育」と言ってしまうとサラリーマンやおじさん世代の方が掴みづらい部分がありそうなので、企業を訪問しているマナー講師の方とのコラボや、マナーブックを元にした講演会などを一緒にやるのは面白いかも。

・拡散やフォロワー数を増やすための秘訣・ポイント・攻略法はありますか?
-> プラットフォームによって拡散のさせ方は変わってくる。Twitterは不特定多数の方に広まりやすいし、Youtubeは関連動画を通じて興味のある人にコンテンツを届けやすい。まずは社会に広く取り組みを知ってもらい、そこからおじさんにも興味を持ってもらうイメージ。そのために「偉いおじさん」に拡散してもらうアプローチはいいかもしれない。

ここはゴールではなく、スタート地点

「#しかたなくないのフラッグシップになるようなプロジェクトを作ろうということで始まった性共育プロジェクト。今回の取り組みを通して、人が集まることで、それぞれがもやっと思っていることが変化のステップを踏んでいくのだと感じた。」

今日の最後に株式会社ネクイノ 代表取締役 石井氏が話していた言葉です。今回の発表会を通して性教育が生活のいろんな場面と紐づいていると思った方も多いのではないでしょうか。突破しやすいところ、できるところから取り組みを企画し、少しずつでも変化は作っていけます。ひとりひとりの違和感をなくさないこと、それを通じて仲間と行動を起こしていくこと。これらを積み重ねて生まれるインパクトは、ひとりで想像するよりもずっと大きいものです。

本プロジェクトは最終日を終えましたが、まだまだアイデアのタネが生まれたばかり。ここからどんな仲間と出会っていくのか、それぞれのアイデアがどのような形となって社会に実装されていくのか。これからの動きが楽しみで仕方ありません。

TextMaki Kinoshita PhotoShiori Ikeno EditRiku(REING)

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