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これからの性教育はどうあるべき? 23人で考える、性共育の可能性。性共育ワークショップ DAY1レポート

「この国の性教育が後回しになっているのは #しかたなくない」にフォーカスした実装活動『性共育プロジェクト』が始動しました。本プロジェクトでは年齢も活動領域も異なる約20名の有志が集まり、性教育を共に育みながらSOCIAL INNOVATION WEEK 2022での「性共育」コンテンツ発表をゴールに、互いの視点・見解を高め合っていきます。

 

2022年5月15日に開催された 「性共育の可能性を探る」をテーマにしたワークショップにて交わされた、熱気あふれる時間の一部をお届けします。

いのちは大切、より「あなたが大切」

ワークショップ前半は、養護教論を経て、思春期保健相談士として性教育の活動を行うにじいろさんのキートークからスタート。

アーカイブ動画はこちらから

今回のテーマは「日本の性教育の変遷と、今の性教育に足りないこと」。さまざまな子供たちと接するなかで彼女が特に課題だと感じているしているのは、暴力・権利・人権に関して知識不足だということ。これらへの意識がないと、自分や相手の被害/加害に気づかず、NOと言えない悪循環が生まれてしまいます。性教育では「いのちの大切さ」という言葉がよく使われますが、それ以上に大事なのは「私は、目の前にいるあなたが大切だ」と伝え続けること。性とは生まれながらの心のあり方のことで、生きる上で欠かせない要素です。性教育とは、健康教育であり、安全教育であり、人権教育でもあるのだと、教えていただきました。

プロジェクトメンバーの声

「学習指導要領では『性交・避妊・中絶は学ばない』となっているが、学校にとって必要と判断されれば教えてよい。画期的な取り組みをしているところもあるのに、教えたくても方法がわからないという現状はもったいない!」

 

ー Eテレの番組など子供向け映像コンテンツを製作する、「株式会社ディレクションズ」大下愛海さん

「性教育に取り組みたいと思った人が自分の自治体でも行動を起こしたいと思った時に、どうすべきかをフォーマットとして共有できたらいいなと思う。」

 

ー 高校生の頃からSNSなどで性教育の発信活動を行う 、学生/性教育プロデューサー・中島理乃さん

「にじいろさんのお話を聴いて、「性」という言葉への偏見・偏った認識が根本課題として根強いのでは?と感じました。まずは「性」を自分ごと化することからアプローチできると、さまざまな物事の考え方への転換につながると思った。」

 

ー 「WAGAMAMAであれ」をメッセージに活動する、

「株式会社Rebolt共同代表」内山穂南さん

性教育には何が必要?

ワークショップ後半は、4〜5人のグループに分かれてワークタイム。まずは「発見とストーリー」シートでひとりひとり自身の視点に基づいたストーリーを作っていきます。互いが考える、より良い未来への視点やアプローチに加え、その発見に至った背景をひとつのストーリーとして共有していきました。

  • オンラインホワイトボードを使用して、ワークショップを進行した。

プロジェクトメンバーの声

「若年妊婦さんのサポートや助産師として働き、この分野に18年いたなかで感じたのは、足りないものと現状維持のものを整理する必要性。性教育は色々な価値観のもとで行われていることが多く、地域によって格差があるし、私立と公立でも教えられる範囲が違う。性教育へのアプローチはさまざま。多面的に専門家が関わるべき分野だと思う。」

 

ー 若年妊婦のサポートや助産師としての活動も行っていた、

「株式会社TENGAヘルスケア」古川直子さん

「性被害にあった10代の頃、当時は自分が被害者であると認識できず、自分を責めてしまっていた。性的同意の前に、自分の身体は自分のものということや、「人権にもっと敏感になること」を教育する必要がある。性的バウンダリー(境界線)を定めること、自分のとってセックスがどういう意味を持つのか定めることを、性教育に組み込むことが重要だと思う。」

 

ー TENGAヘルスケアでのインターンの他、Voice up Japanでの執筆などを行う、

「学生」小川マリナさん

「学校では浸透していない性の知識も多く、もっと抵抗感を無くしていきたい。特に中学生の頃は少しでも性に関するワードが出てくると、茶化してしまった。しっかり学ぶべきことに対して、なあなあにしがちな部分を変えていきたい。」

 

ー 中央大学附属高校3年

「高校生」山本純大さん

「誰かが『話しても良い』という雰囲気を出していくことで、性教育への壁を無くしていけるのではないか。学校での性教育に限界があるのであれば、家庭や地域でオープンに話せる場があると良さそう。」

 

ー 障害福祉の領域で活動する、

「NPO法人ソーシャルデザインワークス」菊池文恵さん

より良い性教育のためにできること

発表の後は、「溶け合わせる」グループワーク。メンバーの発表を聞きながら、自分自身のストーリーからの気づきや知見をメンバーと共有します。互いの視点を互いの文脈に合わせて聞き合い/話し合うことで、メンバー全員の視点を溶け合わせた新たな視点やアプローチを見つけていきました。

  • 各人の視点へ、メンバーが気づきを共有

プロジェクトメンバーの声

「家庭や自己学習で知識を得ることも大切だが、全ての子供が適切に情報を得られる環境にいる訳ではないため、学校での性教育を充実させることが必要。現行の指導要領を変えることはできなくても、講演・ワークショップ・副教材の提供という部分でアプローチすることは可能なはず。」

 

ー 学生・幼児向けの学習コンテンツを制作する、

「株式会社ディレクションズ」原田さん

「私はいろんな教育関係者との繋がりや信頼関係ができたことで、自分の声に耳を傾けてもらえるようになった。現場で聞いた教員や児童生徒のたくさんの声を、教育関係以外の人にも繋ぐ役割を担うことで、より踏み込んだ性教育を実装していきたい。」

 

ー フリーランスで性教育活動を行う、

「思春期保健相談士」にじいろさん

「自分は「性」に対する学びに注力してきた自信がない。同じ経験をする人を少なくするには、先生と生徒が教える→教わる立場で教育が行われるのではなく、対等な立場で共に性に対する認識を改められる場があるといいと思う。また、高校生が性教育を行ったりと同世代の人から学ぶ機会があると恥ずかしさを取り除けるのではないか。」

 

ー 中央大学附属高校3年

「高校生」徳田瑛斗さん

「正直に恥ずかしがらずに、生と性、そしてセックスについて語ることができる未来を目指したい。その根底には性自認や性的指向などに関係なく、ひとりの人間の存在がリスペクトされる、お互いにリスペクトできるコミュニケーションを基盤とする社会の構築がより良い未来への過程で必要だと思う。」

 

ー LGBTQと子育てをテーマに、YouTubeチャンネル「ふたりぱぱ」で夫と6歳の息子と動画を配信する、

「動画クリエイター」みっつんさん

「知るきっかけは色々ある」

ワークショップ終了後、「性教育を知るきっかけは色々あるのだと知った」という声を聞きました。環境が変われば、見える景色も変わるもの。1人1人異なる見方も、同じ課題意識で結ばれることで、「この国の性教育が後回しになっているのは #しかたなくない」状況は変わっていきます。

 

性共育ワークショップ DAY2では、「性共育」のコンテンツを探っていきます。

様々な視点の間で交わされるアイデアをお楽しみに。

性共育プロジェクトについて

 

「#しかたなくない」プロジェクトが2022年5月よりスタートした、「この国の性教育が後回しになっているのは #しかたなくない」にフォーカスした実装活動。

 

教師によるマニュアル的な「教育」ではなく、大人も子供も垣根なく、本当に知りたい事への理解を日常的に深めていく「共育」。それこそが性分野における水準を高めるキーになるのではないか。そんな仮説を実証するべく「性共育」を模索し、形にすることで社会のアップデートを目指す。

 

これまでの性的マイノリティや障がいがある方の多様な性を軽視した「マジョリティのためだけの性教育」ではなく多様な視点をもったプロジェクトにすべく、1月にプロジェクトオリエンテーションを実施。その参加者の中から有志で、性的マイノリティの当事者、障がい福祉施設の方、現役の学生、産婦人科医、性教育講師、企業の方など、さまざまな視点と専門性のある方々をメンバーに迎え、活動中。

Text/Maki Kinoshita
Edit/Riku(REING)

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