TOPICSINTERVIEW

ショッピングモールの中にあるフェムテック専門店〈byeASU あしたへ〉が目指す、“選択できる”世の中。

アパレルやインテリア、雑貨のお店が並び、平日の昼間にも関わらず賑わいをみせる埼玉県越谷市のイオンレイクタウン。kazeの館の一角に、2022年3月1日に期間限定でオープンしたのがフェムテックショップ〈byeASU あしたへ〉だ。

全国に展開するイオンモールで、生理や性など、多くの女性が抱える心と身体の悩みに向き合うためにはじまったのがこのお店。さまざまな人の生活を支えるショッピングモールだからこそ、私たちが明日、より快適に過ごすためにアプローチできることがあるのかもしれない。

プロジェクトの立ち上げに関わったイオンモール株式会社の担当者の織田将矢さん、店舗運営を担う双日インフィニティ株式会社の五味彩さん、そして店頭に立って接客を行うスタッフの清水茜さんに話を聞き、

この〈byeASU あしたへ〉が生まれた背景を紐解く。

清水茜(写真左)

<byeASU あしたへ> 店長。

 

五味彩(写真中央)

双日インフィニティ株式会社所属。<byeASU あしたへ>の店舗運営および仕入れ業務などを担当。

 

織田将矢(写真右)

イオンモール株式会社所属。<byeASU あしたへ>では協力企業との企画開発などを行う。

きっかけは、社内で実施された女性同士の座談会

  • ナチュラルな色合いで統一されたインテリアは明るく清潔感溢れる

大きな木のオブジェが象徴的な店内には、洗練されたパッケージのフェムテック商品がずらり。温かみのある開かれた雰囲気は、さながらコスメショップのようだ。

 

そもそも“フェムテック”とは、女性が抱える健康の課題をテクノロジーで解決できる製品やサービスのこと。最近では東京などの大都市で専門店も増えてきたが、郊外を中心にショッピングセンターを運営するイオンモールでなぜこの取り組みを始めたのだろうか? きっかけは、社として 社会課題解決に向けて何かできないのかという事を検討しており、女性が活躍しやすい環境を作るため、フェムテックについて理解を深めるための座談会を行ったこと。立ち上げからこのプロジェクトを担当することになったイオンモール株式会社の織田さんは、次のように話す。

 

「女性社員たちを集めたものの、最初は座談会の場で何を話したらいいかもわからないほど手探りの状態でした(笑)。ですが、少しずつ対話を重ねていく中で、女性の心や身体の健康に関する知識というのは、女性自身も知らないことが多いとわかってきました。それはきっと、社内の話だけではなくお客様も同じこと。イオンモールの強みは、多くの人にとって“日常”の場であることです。女性が心も身体もケアできるような場づくりをイオンモールの中で行うことで、多くの人に認知を広め、より心地良い暮らしを提案していけるのではないかと考えました」(織田)

 

その頃、店舗運営、事業運営、マーケティングに強みを持つアパレル企業・双日インフィニティの社内でも、同様の課題意識を持ち、何らかの形での事業化を模索していたという。売り場作りやプロダクトの選定を担当することになった五味さん自身も、以前から働く中で、もやもやとした気持ちを抱いていた。

 

「私自身も男性が多い環境で働いていて、歩く速度や食事のスピード、日々の体調の変化みたいなところにちょっとした違いを感じていました。男性の同僚たちが何事もなく乗り越えているところに私は時間がかかったり、引っかかったりしてしまっていたんですが、それもしかたないのかなと諦めてしまっていたところもあったんです。でも、今回この事業に関わることになり、社内はもちろん、イオンモールさんやメーカーさんなど女性の悩みを解決しようとする方々がたくさんいるんだと知って、心強く感じましたね」(五味)

 

以前から交流があったイオンモールと双日インフィニティ。時を同じくして同様の問題意識を抱えていたこともあり、二社は意気投合し、プロジェクトは本始動に至った。

一人ひとり異なる悩みに、アクセスしやすい空間に

  • オープンする前の苦労話を、取材時に笑顔を交えながら話す3人

こうして、二社間で数々の議論を重ね、2022年3月1日のオープンすることになった<byeASU あしたへ>。実際に店舗づくりを進めていく中では、「何もかもわからないことだらけで、苦労しなかった部分がない」のだとか。

 

自分たちも最初は何も知らなかった━━つまりは世間の“フェムテック”に対する知名度や認知度も同じだと言える。このテーマでお店を出す以上、大切にしたいのは“わかりやすい”空間だと考えた。

 

「一口に女性の悩みと言っても、年代や個人によってさまざま。お店を訪れたお客さんが、自分の悩みに合わせてアクセスしやすいように、“生理ケア”“デリケートゾーンケア”など、店内を7つのゾーンに分けました。それぞれピクトグラムと説明を添えて、できるだけイメージしてもらいやすいように心がけています」(五味)

  • 写真の左側「ゆらぎケア」にはメンタルケアのためのアイテムが、右の「メノポーズ」には骨盤底筋のトーレーニンググッズなどが並ぶ

ゾーンを設計する上では、ライフステージに合わせて女性の悩みをとにかく洗い出した。そして、7つのカテゴリーに絞ったのち、気を配ったのは、それぞれを表す言葉選び。例えば、更年期にまつわるアイテムを並べるゾーンは、“メノポーズケア”(メノポーズとは、英語で「更年期」を指す言葉)と銘打つなど、できる限りマイルドな表現に言い換えている。

 

「ストレートすぎる言葉には、抵抗感を持つ方も多いはず。わかりやすさを保ちながらも、気軽に立ち寄ってもらうにはどういう言葉選びがいいか、チームで一緒に考えながらやってきました」(織田)

  • 写真左側の「デリケートゾーンケア」にはケアのためのボディケア用品が、妊活サポートには潤滑ジェルが、「セクシャルヘルスケア」にはプレジャーグッズやセックストイが並ぶ

また、ゾーン配置を考える上で議論にのぼったのが、セクシャルヘルスケアのエリア。プレジャートイなどが並ぶことから、多くの人が行き交う商業施設内の一角という立地上、抵抗感を与えてしまうこともあるのではないかと考えた。

 

「レンタルビデオショップのアダルトコーナーのように、最初は囲いを設けるかどうかも話し合いました。でも、空間を区別することで、それらが“タブー”であるかのように見えてしまいますよね。そもそも〈byeASU〉という店名は、世の中のさまざまなバイアス=先入観を取り払いたいという思いから付けているもの。できる限りフラットにしていこうと決めました」(織田)

 

実際、オープンしてからのお客さんの反応は良好だという。日々店頭に立って接客を担当する清水さんは、こう話す。

 

「女性のお友達同士で立ち寄ってくださって、『私、これ使ってる!オススメだよ』といった言葉を交わされている様子も見られました。意外とオープンなんだなと驚きましたね。当初気にしていたほど、特別視するものではなかったのかなという印象を持っています」(清水)

  • 「生理ケア」には月経カップなど様々な生理用品が、「マタニティケア チャイルドケア」にはママ&ベビー用クリーム等が並ぶ

パートナーや家族など、周囲の理解こそ大切

  • このプロジェクトに関わるようになってから、「妻と話す時間が増えた」と語る織田さん

男性の立場でプロジェクトを率いる織田さんは、今回のプロジェクトを通して個人的にも得るものが多かったという。

 

「フェムテックについては全くの門外漢だったので、このプロジェクトを通して一から勉強しています。その中で、アイテムごとにメーカーさんがいて、開発者さんがいて、それぞれが何らかの悩みを解決したいという思いを持って真摯に製品づくりに向き合われていることを知りました。私自身、結婚していて妻がいますが、生理中に、体調や精神の変化があることをあまり気にしていませんでした。でも、このプロジェクトを通してこういうアイテムやサービスがあるよと提案ができるようになって、話し合う機会も増えたんです。私だけではなく、他の男性たちにも知ってもらって、一緒に悩んだり、解決したりできるような関係を築いてもらえたらなと。周囲の理解も大事。〈byeASU〉は決して女性のためだけのお店ではないので、カップルやご家族で気軽に足を運んでもらえるといいですね」

  • 織田さんのオススメ商品は、ドイツ製の月経カップ「メルーナ」。月経カップとは、生理時に腟内に挿入して経血を「溜めて回収する」アイテムのこと。「メルーナは、シリコンやラテックスを含まない身体に優しい原料で作られているので、安心して使っていただけます」(織田)

実際にオープンしてみると、夫婦や家族で、あるいは男性一人で足を運ぶお客さんもいるというのが、嬉しい驚きだったのだそう。

 

「まだアイデア出しの段階ですが、アイテムのメーカーさん、アプリの取引先と組んだ企画を検討しています。直接消費者と話すことができ、お客さまには何かを学んでいただける機会をつくり、企業と消費者をつなぐプラットフォームのような場になれたらと思います」

  • 清水さんがオススメするのは、スウェーデンで生まれた腟用トレーニングボール「INTIMINA Laselle」。「使い方は、腟に入れて普通に生活するだけ。20〜60代の幅広い年齢層の方に今人気の商品です」(清水)

  • オーガニックコットンでできた〈Hogara〉の吸水ショーツは五味さんのイチオシ。「吸水ショーツというと、黒や濃グレーなどのシンプルなものが多いイメージですが、〈Hogara〉のショーツはカラフル。ファッション性の高いものを選べば、気分も軽くなるのではないでしょうか」(五味)

すべてが“オープン”になることが正解ではない

  • お店の象徴でもあるツリーの下には妊活サポートアプリや最新のフェムテックの情報がたくさん

そのほか、店内は物販だけでなく、情報発信にも力を入れている。

 

「商品紹介のPOPの設置はもちろん、女性の悩みに対処するようなアプリやサービスの紹介をしたり、協賛いただいているメーカーさんのゾーンを設けて彼らの取り組みについて展示したりしています。例えばある時は、女性たちの心や身体の健康にまつわるアンケート結果の展示も行っていました。もちろん何かを買って帰っていただくのが理想ではありますが、滞在していただくだけでも楽しんでもらえるような場づくりをしていますね」(五味)

 

また、接客スタッフの豊富な知識量も魅力のひとつ。年齢やジェンダーにかかわらず、性や身体にまつわる悩みを気軽に相談したり、最適なアイテムを提案してもらったりすることもできる。

 

「メーカーさんからは、研修や定期的な商品説明に関する指導をこまめに受けていて、商品に関してはできる限り多くのことをお答えできる環境を整えています。わからないことがあれば、気軽にお声がけいただけると嬉しいです」(清水)

 

  • ツリーには性や身体の悩みにまつわるキーワードが実る。可視化された言葉の中に自分自身の悩みも探すことができるかも

今まさにはじまったばかりの〈byeASU あしたへ〉。8月までの試験運用を経て、ゆくゆくは各地のイオンモールへと取り組みを広げていくことを目指すという。立ち上げを担当した彼らが理想とする世の中とは、どんなものなのだろうか。少し壮大だが、投げかけてみた。

 

「私は、必ずしも、心や身体に関する悩みが全てオープンになることが正解ではないと思っています。オープンにしたい人はすればいいし、心に留めておきたい人は、留めておける。それぞれの選択が否定されず、互いに尊重し合える社会になればいいなと思います」(五味)

 

五味さんの言葉を受け、織田さんはこう続ける。

 

「“十人十色”という言葉の通り、一人ひとりがありのままの自分に自信を持って過ごせる世の中が一番いいなと思っています。その時に、それぞれの支えになるようなアイテムや学びをこのお店から発信していけたらなと。自分の相談でも友達の相談でもいいので、いろんなことを話し合える場だと思ってもらえたら嬉しいです」(織田)

SHOP DATE)

 

<byeASU あしたへ>

 

2022年3月から8月の期間限定で、イオンモール越谷レイクタウンにオープン。フェムテックを専門に扱う他に、性や生理、メンタルヘルスなど女性の悩みを手助けする情報発信なども行っている。イベントの情報は公式HPにて。

 

住所/埼玉県越谷市レイクタウン4丁目2番地2 イオンレイクタウンkaze 2F byeASU

営業日/年中無休

営業時間/10時~22時

電話番号/048-988-3380

公式HP/https://www.byeasu.com/

Text/Emi Fukushima

Photo/Shiori Ikeno

Edit/Eisuke Onda

このページをシェアする

YOUR VOICE

あなたの生活において「しかたない」と
諦めかけていること、聞かせてください。
今後の活動に役立ててまいります。

は#しかたなくない
{{voice}}

ツイートする