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トークセッション|「#しかたなくない」のその先、全ての人が意見を言える社会をめざして

情報取得が便利な社会になり、自ら考え意見を持つ機会が減ってしまった現代で、#しかたなくないプロジェクトがもたらす未来のカタチとは?

2022年1月12日に開催したオリエンテーションにて、渋谷区で新しい仕掛けを作っていく一般社団法人渋谷未来デザインの長田新子さんと金山淳吾さんに株式会社ネクイノ 代表取締役 石井健一社長がお話を伺いました。

​​Q. 現状の社会における課題意識

石井健一(以下、石井):今日来て頂いたお二方、渋谷未来デザインさん、皆高名な方なのでご存知かと思うんですけども、ご紹介させて頂きます。一般社団法人渋谷未来デザイン理事の長田さんです。

 

色んな仕組みや仕掛けを渋谷を中心にやられている方なので、今日一緒に色んなお話をさせて頂ければなと思っています。質問の方いきましょうか。いきなりちょっと主語のおっきい話から行こうと思うんですけど、この「しかたなくない」って言われるものを見つけ出すには、課題が何かっていうのを置かないといけないと思っています。「Q. 現状の社会における課題意義」それぞれお二方が持たれているものって何なんだろうっていうところからこのセッションを始めていきたいなと思っているんですけど、どちらからいきましょうか。

金山淳吾(以下、金山):じゃあ僕から。改めまして、渋谷未来デザイン、あと渋谷観光協会という組織の代表をやってます。金山といいます。渋谷って色んなプロジェクトがあって、楽しそうなことだったり社会的意義があることを色々仕掛けやすい街だよねって言って頂いて。こうやってネクイノさんも大阪から渋谷でわざわざこういうプロジェクトをローンチしたいと相談いただけるのすごいいいなと思っているんですけれども。僕が今1番現代の社会で課題だなと思っていることは、自分の意見を本当に持ちにくくなってるんじゃないかなってことなんですよね。

石井:持ちにくい?

金山:持ちにくい。要は、前までは例えば皆もニュースを見たりすると思うんですけれども、ニュースを見たら自分でそのニュースに向き合って考えるっていうプロセスがすごく大切な時間だったはずなんですけども。

 

今、色んなNewsPicksとか便利なメディアが出過ぎてしまったために、ニュースに対して解釈まで一緒にくっついてきてしまう。誰がどういうスタンスで簡単に態度表明で「いいね」とか色々リーズナブルになってしまう。コンビニエンスになりすぎてしまって、課題をスルーしてしまうことがすごく課題だなと思っていて。本当はそのニュースに対して自分のスタンスを持つことと、そこに対して自分で声をあげていく、考えるって いうことがすごく大切だったのに、そのプロセスがゴソっと抜けがちなのが、すごい課題なんじゃないかという風に僕は思ってます。

課題をスルーしてしまうことが課題

石井:ありがとうございます。長田さんどうですか。

長田新子(以下、長田):まず本当にたくさんの方お集まり頂いてありがとうございます。私が最近すごい思っているのが、スタートアップすごいなと思っていて。自分が社会課題に向き合って色んなことを進めている。

 

一方で、大企業にいるとすごい流されちゃう。なかなか自分がやりたいことを上に上げてもそのまま押しつぶされる。それに慣れてしまうと、逆に言うと、次に何かをやりたいとか行動ができなくなるんだなっていう社会の環境みたいなもの。もしかしてそれって教育とか、仕組みにすごい課題があるのかなって自分自身最近ちょっと感じていて。コロナで特に、例えば大学の方とお話ししても、なかなかそういう仕組みを抜け出せないスパイラルに入ってるなとはすごい思っていて。

 

そんな時に、今日の「#しかたなくない」みたいなことを考えるっていう機会をもらうってことはすごく大事だなと思っているんですよ。多分その考えることをやらなくなっちゃってる。企業のあり方とか、社会のあり方とか、そういうところにすごい自分の中でどうしたらいいんだろうなと感じている課題ではありますね。

石井:なるほど。隣の人と同じであることが是っていうのはまだまだ強いよなと思っていて。とはいえ今、長田さんがおっしゃったように教育の場所だと、個性を磨こうぜとか自分らしくあろうぜと言うけど、でも人と違うことをやると「協調性がねえよね」って怒られたり、言われたりとかってあると思うんですね。メディアのニュースもそうで、コメンテーターが言った事、それが標準なんだよって形がインストールされちゃってるとこもありますよね。

金山:そうですね。僕は便利になることは決して悪いことではないんだけれども、その便利さの裏側にある自分で考えたり、自分で選んだりする行為自体がすごくチープなものになっているのが課題だなと思っていて。そこは本当は人が成長して情報が体の中に入っていって、それを消化して、「こう言う態度を取れるようになった」「こういう発言をできるようになった」ことを感じるのが成長実感なのに、「誰々が上手いこと言って、俺これに賛成」「リツイートしとこう」って感じで情報と向き合ってしまうのが、果たして本当の成長なのか、何なのかすごい分かりにくいなと。

 

だから、今回のプロジェクトはブランクになっていて、そこに自分で何を書くか。選ぶんじゃなくて、何を書くかっているのはすごく良いプロジェクトですよね。

長田:意見やコメントはすごい出るんですが、アクションにするのは難しいじゃないですか。本当の意味で今回のステップも小さいアクションだけれでもスタートするみたいな。それをどれだけ生み出せるのかなって、SIW(SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA)​​は特にそれを目指していますよね。

金山:そうですね。SIWは2017年に0号プロジェクトを立ち上げて、2年目から長田さんにも入ってもらって、SIWっていう名前にしているんですけども、初期は登壇してもらう人たちに「事例を持ってこないでください」「他でしゃべったことのあることは喋んないでください」と言うことをやっていたんですね。ハードルが高すぎて嫌だと言われて。僕からアジェンダを投げて、このアジェンダに対して考えていることを喋ってくれと。喋れる人と喋れない人とを選んで。人の前に立つべき人なんですけどね、いるんですよ。劇的に考える力っていうのは、情報を多くカバーできるようになったけども、弱くなっているんじゃないかなと危機感をそこで覚えて、課題なんじゃないかなと。

石井:課題とすると、考えるとか、言葉にするとか、ブランクになってるとこに自分の言葉で書くとか、こういったところが全体的に落ちてんじゃねえのかが大きな社会課題だと。

金山:答えが探せる社会になっちゃった。答えらしきものに辿り着きやすくなっちゃったから。

Q. #しかたなくないプロジェクトのポテンシャル

石井:今SIWのお話しが出たんで、せっかく皆さん渋谷の方なのでご存知かと思うですけど、SIWを知っている人?お、結構いる。そして、11月のイベントに参加した人?いますね。11月是非私たちもご参加させて頂ければと思います。一つと言わず、二つ三つよろしくお願いします。そういうゴールになるようなものがあると、こういうプロジェクトもやりやすくて、この後にもいくつかプロジェクトの話が出るんですけど。やっぱりSIWでどのように世の中に発表していこうかとか、置き石をつくっていこうとか、どれだけやれるかってのはマイルストーンとしてすごく大事だろうなと思っております。

 

次の質問にいきましょうか。「#しかたなくない」が出てちょうど一ヶ月なんですけど、お二方もだいぶ見て頂いたかと思うんですけど、このプロジェクトのポテンシャルってこういうところにあると思うぜみたいなところを是非共有頂ければなと思うんですけど、いかがでしょうか。

長田:さっきのを裏返すかもしれないんですけど、やっぱり自分の意見を言える環境じゃなかった方も多いと思いますし、考えたことが意外となかったり。私も「仕方ない」とか「しょうがない」って言葉を使うんですけど。でも、もしかしてちゃんと考えてみると、やっぱりそうではなくて、実はちゃんと話せば「解決策があるんだ!」とか「聞いてくれる人がいるんだ」とか、そういうことをするきっかけになればいいなと思っていて。

私も娘がいてやっぱり生き辛いっていう時に「しょうがないよ。誰も聞いてくれないから。」となってしまう。親ではなくても、生き場所があるとか、もしかして解決手段のきっかけと言葉に出すことはすごく難しい。

石井:言語化って、すごい難しいんですよ。

長田:私も出来るかって言われたら難しいんですよ。金山さんは結構上手いけど。それをちょっとでもブランクに書いてみる、言ってみる、聞いてみるきっかけになればいいなと思って、本当に一緒にやりたいですねというところにきました。

バラエティではなく、ダイバーシティをめざす

石井:ありがとうございます。金山さんはいかがですか?

金山:ちょっとだけ遠いところの話なんですけど、今多様性って大事って言うじゃないですか。Diversity & Inclusion。多様性って言う時に、ダイバーシティって言葉を使いますよね。「多様」って言葉を英語で探すと二つ出てくるんですよ。ダイバーシティとバラエティ。なんで皆社会の中で多様性を尊重しましょうって言うとダイバーシティって使うんだろうって思った時に、そもそも生物多様性から来てるよねと。それって食物連鎖のピラミッドじゃないですか。誰かの栄養になっていって、連鎖して、養分になって。人間ってその食物連鎖の輪から外れているんですよね。なぜ外れているかと言うと、知的生命体として脳がすごく発達したから。捕食するだけだから、コントロール出来るようになった。だからこそ「ダイバーシティ」を使うんだろうなと思って。元々は誰かの栄養になるってことで生態系を支えるために使われていたのはダイバーシティ。バイオ・バラエティって言わないじゃないですか。

 

お菓子に例えると分かりやすくて、お菓子は関係ないお菓子が詰め合わされていると「バラエティパック」って言う。あれ楽しそうでいいんだけど、今の社会の多様性は意外とバラエティ感があると思う。皆好きなこと言って、コミュニティはあるんだけど、結構交わっていないなって感覚が実はある。コミュニティって言葉も便利で、集まってれば何となく「俺たちには俺たちの主張があるよ」みたいな。

 

この#しかたなくない プロジェクトはもっと上位にあって、その分断とは言わないけれど、近そうで遠かったコミュニティが対話をしながら今までの当たり前に対して自分たちなりのスタンスをつくっていこうよってなるんじゃないかと思っていて。バラエティ感ある人間社会の多様性をちゃんとしたダイバーシティ、関係性のある対話に引き上げてあげてくれる可能性があるんじゃないかなと。

 

SIWもそうで、最初はダイバーシティサミットと呼んでいたんですよ。それって、人の話を聞く。それに対して自分の意見を人と交換する。で、具体的なアクションを自分と全然違うタグを持った人たちと一緒につくる。この3つがテーマだった。こういったサブプロジェクトみたいに生まれてきてくれて、ネクイノにとってはメインプロジェクトで。SIWからすると、子供のようなプロジェクトが生まれてくれて是非形にしていきたいなと思っていますけどね。

石井:今のダイバーシティとバラエティって考えると面白い。これいい話なので、皆さんピッチする時は是非使ってください。

金山:ダイバーシティを主張する時はとにかく隣の人と話をしよう。関係ない人と話をしよう。遠くの人と話をしよう。話をする中で、別に違いを認めるとかどうでもいいんですよ。自分の主張でどんどん喧々カクカク議論仲間を作ればいいと思っています。

石井:確かに仰る通りで、うちも今100人くらいのチームになったんですよ。会社つくったのは2016年なんで、今6年目なんですけど。10人から15人の時はある意味、同質なメンバーが多かったんですね。思考性とか考え方も。30人とか50人を超えてくるとバラエティは容易に出来る。この時に、会社の中で仲悪くって。今100人になって、まだ胸張って仲良いですと言い切れないけれど、金山さんが仰っていたダイバーシティの匂いがしてきたのが最近すごく思っていて。これはメンバー間を尊重するとか、話を聞こうぜってのは2021年からこだわってやっているんですけど。

 

バラエティがあるだけじゃだめで、有機的に繋がって話を聞かないとそれが社会実装されていく形にはならないんだということなんですね。こういうふうなプロジェクトを通じて一個一個書いてみて、それこそSIWのように一年間でこのようにできましたよって持っていける未来がポテンシャルとしてありますとお墨付き頂きました。

 

Q.「#しかたなくない」がもたらす未来のカタチ

石井:さあ、この「しかたくない」プロジェクトが渋谷、もしくは日本、世界の意味でもたらす未来の形、お二方に大きく吹いて頂こうと思いますので、風呂敷広げてください。お願いします。

金山:#しかたなくない プロジェクトがもたらす未来の形はね、今ネクイノのプロジェクトに見えているところが立ち上がりだからそうですけども。個人、色んなコミュニティ、色んな企業が自分たちの中で#しかたなくない プロジェクトを走らせてくれるといいと思っていて。ここに集まっている人たちで議論しても10個20個30個「#しかたなくない」って言いたいことが出てくると思うんですけれども、多分全然足りていなくて。

これはいわゆる課題解決のプロジェクトではなくて、僕たちが生きる未来の社会の可能性を考える超楽しいプロジェクトだと思って、色んな企業が自分たちのものにしてくれるといいなと思っているんですよね。裏話になっちゃいますけど、このプロジェクトやるときにスマルナのロゴ消してとけばって言ったんですよ。こんなもんあると、スマルナの単なるプロモーションになっちゃうから、それ消してここにロゴ貼ってくださいみたいな話をしたんだけど。それはお金出している人だから、最初は僕らでやるんですっていう話にはなるんだけども、僕はここにどんどんツリー状にそのスタンスが伝えられるといいなと思ったんですよ。

 

スマルナが1号賛同企業なだけで、色んなコミュニティが賛同して自分ごと化してくれるといいんじゃないかな。そういう未来の明日、明後日、1週間後、半年後、一年後をイメージしたいなと思いましたね。

石井:企業だったり組織が得意としている解決するゾーンがあるじゃないですか。ここを各企業さんが「これやれるよ」とか「どこどこと一緒になったらいけんじゃないの」みたいなところがこのプロジェクトの下にいっぱい走っていくと多分あるべき姿に、未来に繋がっていきますよね。長田さんお願いします。

長田:最終的には、「しかたなくない」よりも全ての人が自分の意見を言えるみたいな。それに対してちゃんと聞いて。そういう環境とか個人が「こんなこと言っていいんだ」という世界を作ることだと思っていて。なんでそれを言うかというと、私は今まで日本の会社で働いたことがなかったんですよ。アメリカの企業、北欧の企業、ヨーロッパの企業だと、意外と自分が働きやすい環境を与えてくれてたなと、今思えば感じていて。個人の尊重と、仕事に対してもいきなりこれをやれってのがないんですよ。こういう仕事があるから、「どう思うか?これにチャレンジしますか?合意しますか?」と仕事をやるところで育ってきて。自分が救われたなと思っていて。

 

逆に言うと、今は「これ、やれ」ではなくて、お互いの方法や話を聞きながら、リスペクトしながら合意してサポートしあえることができたらいいなと思っていて。それが今渋谷からスタートして、逆に今後他の自治体や色んなところに広がっていったり。渋谷で生まれたことが全国に広がることを是非やってみたいなと。それが未来の形かなと。SIWでは渋谷、もしかして次は「私たちもやりたいです」っていう地域の方が生まれて欲しい。

石井:大阪は任せてください!最後に、お二方にとっての「#しかたなくない」ことは何ですか?

金山:僕は、「夢を諦めちゃうことは、#しかたなくない」。大人になって将来の夢聞かれなくないですか?でも僕の将来の夢は、プロゴルファーなんですよ。

石井:マジですか!

金山:めっちゃトレーニングしてるんだけど。別に今からアスリート目指せるスポーツいっぱいありますよね。クレー射撃のオリンピックとか。それって、一個一個自分がやってみたいこと、やりたいことを口にすることをやめたくないなと思ってます。気がついたら9個会社つくってて。夢ばっかりなんですよ。すごい楽しいから。夢を諦めちゃうのはしかたなくないですね。

長田:結構似ていて、やりたいことは日々どんどん増えていってる。色んな人と話す、「これをやりたい。あれをやりたい。やってみたい。」ってのがあって、それを時間がないからやれないじゃなくて、どうやってポジティブにやれるような形を色んな人に相談して探す。

会社を去年つくったりしていると、「これを一緒にやりたいんです」とか「この話聞いてください」と出来るだけやることで次の可能性が広がるなと思っている。「自分に制限をつけるのは、#しかたなくない」みたいな。

石井:皆やりたいことやろうぜとお二方から頂けたので、今日は2022年の1月12日ですが、「明日から皆好きなことをやろうぜ」、そして「夢を諦めないようにしようぜ」、「それはしかたなくないぜ」ということですね。ありがとうございます。これで一つ目のセッションを終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

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